研究概要 |
イオンアシスト蒸着法を用いた有機固体コンデンサの開発という目的で研究を遂行し、本年度に得られた結果を概説すると以下のようになる。 o固体電解質として探索している各種導電性材料のうち、4,4′-ジピリジル誘導体・TCNQ錯体が1S/cm^2まで導電率が上昇し、かつコンデンサの要である単位面積当たりの容量出現率が一番大きくなっており、当初予測した値に比較して35%の増大となり満足できる結果が出ている。また同時に蒸着膜はイオンの照射効果により、結晶構造および高次構造が制御でき、一様で均質な薄膜が形成されている。 oコンデンサの容量値は理論容量2muF/cm^2のA1箔を利用して、熱蒸着法(0.11muF/cm^2)コロナ帯電方式(0.38muF/cm^2)、振動電極法(0.56muF/cm^2)に比べ、イオンアシスト蒸着法(1.04muF/cm^2)の場合が飛躍的に増加することが明らかとなった。特にイオンアシスト法の中でも静電容量は、イオンエネルギーとイオン電流密度さらにはイオン種(ここでは、Ar^+,N^+,He^+を利用)に著しく依存しており、これまでに得られた最高容量はHeイオンを使用した場合であり、1.38muF/cm^2が最高の容量出現率である。 oA1箔のピット径と4,4′-ジピリジル誘導体・TCNQ錯体の分子サイズの関係を明らかにするため、ドナー・アクセプタのモル比の異なる上記錯体(1:0.5〜3)を合成して実験を行った。容量出現率はピット径を一定とした場合、錯体分子のサイズに大きく依存することが分かった。現時点ではTCNQ錯体のドナー・アクセプタのモル比が1:1.5のとき容量出現率が最大となっている。
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