研究概要 |
有機薄膜アルミニウム(A1)電解コンデンサの実用化を図るため、本研究は三名の共同研究者により3年計画で以下のように (1)イオンアシスト法による有機蒸着膜の創成と薄膜作成技術および膜評価技術の確立 (2)固体電解質として利用する各種TCNQ錯体の合成と高導電性有機物質の探索 (3)試作有機薄膜A1電解コンデンサの諸特性の測定とその評価 (4)各種電気・電子回路に試作コンデンサを実装し、運用と活用面から比較検討と評価 を行うもので、最終年度(平成7年度)はこれまで2年間で得られた(1),(2),(3)の結果をもとに主に(4)に焦点を合わせて実施した。 o固体電解質は、ドナー・アクセプターのモル比が1:1.3の4,4′-ジピリジル誘導体・TCNQ錯体を使用した時、最も容量出現率(最大80%程度まで上昇)が高くなり、それと同時に100eV前後の低エネルギーを用いたイオンビームアシスト法で成膜を行った蒸着膜(固体電解質)の導電率は10S/cm^2まで向上した。試作コンデンサの周波数特性は、10^5Hz以上で著しく改善されることが明らかとなり、本コンデンサを高周波インバータ回路およびスイッチング電源等に組み込み電気・電子素子としての機能評価を行った。その結果、従来の溶液型A1電解コンデンサに比べリップルが顕著に抑えられることが分かった。 o本試作コンデンサの温度特性は、10^5Hz以上の高周波領域で、従来品で優れた特性を持つフィルムコンデンサ並みに安定していることが分かった。さらにまた本コンデンサはチップ化が図れるため、フィルムコンデンサと比べた場合、価格、サイズ等の点で有利となっている。 以上の(1),(2),(3),(4)の研究から得られた結果と成果を報告書としてまとめた。
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