本研究の目的は、ナノメートルサイズの金属微粒子が高密度で2次元的に分散する薄膜(島状金属薄膜)を記録媒質として用いた、高い反射率と大きな光学特性変化を有する光ディスクメモリの実用化にある。本年度は、銅、銀、アルミニウム等の単一元素からなる島状金属薄膜に関して、加熱処理による光学特性変化、レーザによる書き込み実験、読み取り実験等を行い、良好な結果を得た。 島状銅薄膜については、質量膜厚8nm、成膜温度150℃程度の成膜条件で、波長800nm付近で反射率50%、吸収40%程度の薄膜が得られ、130℃以上の加熱温度で反射率が15%にまで低下することが分かった。また波長820nm、出力35mWの半導体レーザを用いて、1μm以下の幅の微細なピット列の書き込みに成功した。記録のメカニズムについては、真空中あるいはアルゴンガス中での加熱処理を行った薄膜との比較により、銅粒子の酸化によることが明らかになった。また、アルミニウムについても、粒子の酸化により記録が可能であることが分かった。 また、島状銀薄膜については、2通りの記録メカニズムが利用可能であることが分かった。第一は粒子の形状変化に基づく反射ピーク波長の短波長側への変化であり、室温成膜した島状銀薄膜を150℃程度に加熱することにより、波長800nm付近で大きな反射率変化が得られる。第二は、銅の場合と同様粒子の酸化によるもので、150℃〜300℃程度の熱処理を施した薄膜を、さらに400℃以上で加熱することにより、波長500nm近傍で大きな反射率変化が得られる。 本年度は、以上のように追記型メモリへの応用に関する原理確認実験に成功した。次年度は、書き込み速度や耐環境特性、保護膜に関する検討等、実用化に関する実験的検討を行う予定である。
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