本研究の目的は、、ナノメートルサイズの金属微粒子が高密度で2次元的に分散する薄膜(島状金属薄膜)を記録媒質として用いた、高い反射率と大きな光学特性変化を有する光ディスクメモリの実用化にある。昨年度は、金、銀、銅、アルミニウム等の単一元素からなる島状金属薄膜に関して、加熱処理による光学特性変化、レーザによる書き込み実験等を行い、光ディスクメモリとして適当な金属材料を選択した。本年度は、それらのうち最も適当と思われる銀について重点的に研究を行った。 島状銀薄膜につては、粒子の形状変化と酸化の2通りの記録メカニズムが利用可能であることが昨年度の研究により分かっている。これらの内、より有効なのは前者であり、室温成膜した島状銀薄膜を150℃程度に加熱することにより、粒子の形状変化に基づく反射ピーク波長の短波長側へのシフトが生じ、波長800nm付近で大きな反射率変化が得られる。加熱による粒子の形状変化と光学的特性の変化の関係は、原子間力顕微鏡を利用した観察により報告者らにより初めて明らかにされた。さらに、実用化に関する研究も行った。書き込み速度については現在のCDの読み取り速度と同程度での記録が可能であることを確認した。耐環境特性については、銀粒子自体は安定性に乏しく、高湿度化で酸化が進行してしまうが、フッ素樹脂中に埋め込むことにより極めて安定になることが確認された。なお、反射率では記録前の状態で50〜60%のものが得られており、CD互換可能なレベルに近づきつつある。 以上、本研究により、島状金属薄膜は追記型光ディスクメモリとして有望であり、かつ実用化に耐え得るものであることが明らかになった。
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