研究概要 |
次世代の光波通信として注目される高密度波長多重(あるいは周波数多重)光通信方式においては,狭帯域な周波数分離器(狭帯域周波数フィルタ)が必要になる.しかしながら,その波長フィルタ特性(特に中心波長)は温度に非常に敏感で広範な普及には適さないので,温度無依存な狭帯域波長フィルタを実現する事を目的として,本研究では光路長が温度によって変化しないアサーマル光導波路の開発を目指している. まず,従来の基礎研究で得られていた薄膜材料の屈折率温度係数を基礎データとして,従来の2次元(平板)導波路からさらに3次元(チャネル)光導波路でアサーマル光導波路を設計するための光路長温度係数の計算プログラムを,有限要素法を用いて作成した.そして,本年度に購入したワークステーションを用いて具体的にリッジ装荷型光導波路のリッジ部に屈折率温度係数が負の値を持つMMAポリマーを用いた3次元アサーマル光導波路を設計し,それを試作して光路長温度係数を測定したところ,従来の2%にまで光路長温度係数を低減させて、ほぼ3次元アサーマル光導波路の開発に成功した. 次に,より広い温度範囲でのアサーマル化を目指すには,導波路材料の光路長温度係数を正確に測定する必要がある.そこで,試料導波路をマッハツェンダー干渉計の一方の光路に入れ,他方の光路の光周波数を少しシフトさせて導波路からの出射光の位相変化をヘテロダイン信号の位相の変化から読みとる新しい導波光の位相変化測定システムを開発した.今後はこのシステムを用いて,波長1.3μmおよび1.55μm帯における各種導波路材料の屈折率温度係数をより精密に測定し,これらの波長帯における3次元アサーマル光導波路の実現を目指す.
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