研究概要 |
昨年度の研究結果から、インジウムースズ酸化物(ITO)を用いて試作したSNS素子における特性は、YBCOとITOとの界面における電子状態が重要な役割を果していると推測される。平成6年度では、次の2つの事柄について研究を進めた。(1)SNS素子の特性を理解するために、YBCO-ITO単独接合のノーマル状態での電流-電圧(IV)特性について解析し、この接合が半導体のpn接合的かショットキー接合的かを検討した。(2)SNS素子のIV特性が、透明導電性酸化物の変化にどのように依存するかを調べた。得られた主な結果次の通り。 1)SN素子のIV特性データをダイオードに対する一般式J=Joexp(eV/nkT)(ここでn=1,2はそれぞれショットキー接触的・pn接合的)で解析した結果、"判定指数"nは、0.5〜0.8となりショットキー接触的であると判定される。そこで理想的な接触を仮定してそのエネルギー障壁の温度依存性を調べると、温度と共に直線的に増加している。これは接合面付近に界面層が存在することを示唆している。 2)N層としてITOとインジウム酸化物(スズを含まない)In_2O_3の2種類を用いたSN接合について特性を調べた。その結果、In_2O_3の場合の方が非直線性が強く現れ、更に逆方向特性に微分負性抵抗が現れる場合がある。これはN層の木均質部分での電子なだれ等によるものと考えられ、スイッチング素子として使える可能性もある。 3)SNS接合について、ITOとIn_2O_3を用いたものとも、室温では直線性を示すのに対し、液体窒素温度ではジョセフソン素子と定性的に一致する特性が得られた。素子特性はIn_2O_3を用いた場合の方が優れているようである。 以上の結果から透明導電性膜を用いて酸化物超伝動デバイスが作製できることを明らかにした。またYBCO/ITO界面ではショットキー障壁が存在すると考えられ、この効果を利用して超伝導/縮退半導体デバイスの可能性を示した。
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