研究概要 |
移動通信は、時間と空間を超越した通信本来の要求を満足するものであり,自動車電話と携帯電話は近年長足の発展を見せている。これらの無線システムを構築する際にマルチパス伝搬に起因するフェージングの対策が施されなければならない。本研究は,我々がこれまでの研究により蓄積したマルチビームアレーアンテナに関する知見を応用し,一つのマルチビームアレーアンテナを指向性(角度)ダイバーシチ用アンテナとして用いることを提案し,その試作と伝搬実験によって,従来の方式よりも簡易で優れた指向性ダイバーシチの新しい可能性を実証し,ディジタル移動通信の普及に貢献しようとするものである。4素子正方配列及び7素子六角形配列のマルチビームアレーアンテナを設計・試作し,構内及び市街地におけるダイバーシチブランチ間相関及びダイバーシチ利得を測定し,評価する。本年度は,まず,4アンテナポート×4ビームポートのプラナマルチビームアレー用BFN(Beam Forming Network)の設計・試作を行った。方向性結合器は二次元配列の一次元配列への等価変換という新しく見出した理論に基づいて行い,結合スロット方式の平面回路で設計した。平面回路の設計は設備備品として購入した高性能ワークステーションを用いて行った。次に試作した4アンテナポート×4ビームポートBFNの伝送特性を測定し,その結果に基づいたBFNの精密設計を行った。最後にマイクロストリップパッチアンテナを素子とする4素子アレーアンテナを試作し,これと,BFNを組み合わせたマルチビームアレーアンテナを4ダイバーシチブランチを持つダイバーシチアンテナとして用いたシステムのブランチ間相関及びダイバーシチ利得を室内で測定評価した。その結果,0.5以下の低いブランチ間相関,および5〜8dB程度のダイバーシチ利得が得られた。
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