研究概要 |
自動車電話と携帯電話などをはじめとする無線通信システムは今後ディジタル化が進み,データ通信に応用されようとしているが,そのためにはマルチパス伝搬に起因するフェーディングの対策方法が確立されねばならない.本研究は,我々がこれまでの研究により蓄積したマルチビームアレーアンテナに関する知見を応用し,一つのマルチビームアレーアンテナを指向性(角度)ダイバーシチ用アンテナとして用いることを提案し,その試作と伝搬実験により従来の方式よりも簡便で優れた指向性(角度)ダイバーシチの新しい方式の可能性を実証しようとするものである.その研究成果は以下の通りである. まず,8素子マルチビームプラナアレーアンテナを試作し,指向特性を評価した.BFNとしてはバトラ-マトリクス回路を用い,アンテナ素子は方形マイクロストリップアンテナと,7素子六角形配列+1素子の配列とした.この配列は被覆条件を満足し,リニアアレー用BFNのアンテナポートを面上にリアレンジすることでプラナアレー用のBFNとすることができる.測定指向性は理論値とよく一致し,各ビーム間の直交性は良い.これを6.9×8.7[m]の室内における受信アンテナとして用いた伝搬実験を行なった.周波数は1.5GHz帯とし,室内には遮蔽体,反射体,散乱体を適当に配置し,受信電界強度分布がレイリー分布となるような環境をつくった。10%値でのダイバーシチ利得は8ブランチで7.03dBが得られた.この測定に用いた装置の精度は1%値で評価出来るほど高くなかった.同時に行なった計算シミュレーションによれば4ブランチ合成の場合15.78dB,8ブランチ合成の場合19.81dBが得られている. 次に,高精度の新しい装置を用いて2.5GHz帯での実験を行なった.この場合,プラナアレーとしては最小規模である3素子アレーの特性を調査することとした.素子は円偏波開口結合型円形パッチアンテナとし,BFNは改良型ブラス回路を採用した.室内伝搬実験を行ない,1%値でのダイバーシチ利得は約13dBが得られることが分かった.これは,シミュレーションの結果とよく一致した.
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