研究概要 |
本年度(平成6年度)の研究実施計測に基づき、得られた成果の概要を箇条書すれば以下のようである。 1.日常生活内姿勢変化の連続計画法と行動シナリオ作成に関する検討:身体を体幹、大腿、及び下腿の3つ部分に分けた時、重力方向に対するそれぞれの部分の角度が判れば、ヒトが日常生活で得る姿勢の殆どが識別でき、日常行動を把握することが可能となる。そこでこの原理に基づき、角度検出には磁気抵抗素子を用いた小型角度センサを利用し、垂直(重力)方向に対し±90°の範囲で各部の角度を検出して、A/D変換器(8bit:サンプリング時間;0.1,0.2,0.5,1s)を介してICメモリに3つの角度情報を収録(容量;0.1sサンプリングで24時間記録)するタバコ大サイズの携帯ユニットを試作開発した。データ再生にはマイコンを用い、体幹-大腿-下腿を3本のバ-表示で行い、姿勢変化を時系列表示又はモニタ画面上に動画表示できるようにした。 2.無拘束循環機能情報・姿勢計測システムの開発:前年度で得られた携帯型循環機能計測装置と前記1.のユニットを組み合わせ、循環諸情報(最高[SBP]/平均[MBP]/最低血圧[DBP],脈波間隔[P-P],瞬時脈拍数[HR],一回拍出量[SV],心拍出量[CO=SVxHR],末梢循環抵抗[Rp=MBP/CO],心臓酸素消費量指標[RPP=SBOxHR])及び姿勢情報を同時モニタできる携帯システムの開発に成功した。 3.健常人により試用とシステム評価:2.で得たシステムを実際に日常生活場で試用し、システムの性能評価を行った。中強度の運動時や急激な体位変換時などでは、生体検出信号にア-ティファクトが重畳して計測困難な場合があったが、全体として安定した長時間計測が可能であった。しかし、ア-ティファクトによるデータ欠落の場合でも、今後予定している最大エントロピ法(MEM)を用いたスペクトル解析による時系列循環情報の周期構造分析には差程大きな影響を与えないことが計算機シミュレーション実験で確認され、実用上問題はないことが判明した。更に、循環情報の相互相関関係、夜間血圧低下の要因が心機能変化に起因する場合、或いは末梢循環抵抗変化に因る場合があること、各種循環情報変動の日常行動が及ぼす影響、一日の姿勢状態ヒストグラムパターンと循環情報変動パターンとの関係など、興味ある新知見が得られた。本研究で得たこの様なシステムは国内外を見ても初めての試みであり、次年度では更ににデータを収集して、本システムの有用性と生体機能に関する新知見を公表していく予定である。
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