研究概要 |
本研究は,半導体デバイスで用いるSi,GaAsウェーハの表面ミクロ構造および表面化学状態を赤外反射分光法で精密にかつ迅速に評価することによって,半導体製造プロセスにおけるウェーハ表面状態を原子レベルで制御する計測法を開発することを目的とした。具体的には,この計測法を半導体製造ラインに組み込むことを念頭に置き,半導体大口径ウェーハをそのままの状態で,真空中,常圧中,溶液中のそれぞれで赤外分光分析できる装置を試作することである。特に,液中計測装置はフッ酸などの腐食性溶液も導入できるようにすることを目指した。本年度は、大気用、真空用、溶液用赤外評価装置の設計・製作・整備を行い、製作した評価装置の性能を評価することを目標とした。 大気中の評価装置は、ほぼ完成し、その装置を用いて、Siウェーハ表面の水素終端化に関する研究と、Si表面のオゾン酸化と大気中酸化の初期過程の研究を行った。この研究により、水素終端したSi表面の初期酸化過程において、表面Si原子の4本の結合手が次々とSi-O結合に変わっていく様子が初めて確かめられた。 真空用赤外分光評価装置は、10^<-10>Torr台の真空を達成でき、水素終端Si表面のSi-H振動スペクトルが再現性良く測定できることが確認できた。現在、この装置を用いて、Si表面の酸化に対する水と酸素分子の寄与の違いを調べている。これはSiのエピ成長や酸化膜形成プロセスにおいて非常に重要である。 溶液用赤外評価装置は、耐腐食性セルと精密光学ステージを製作し、これについても水素終端Siウェーハ表面のSi-H振動スペクトルが再現性良く測定できることが確認できた。現在、この装置を用いて、フッ酸溶液中のSi表面のエッチング過程を調べている。エッチング過程の溶液中のその場観察はこれまでにない試みである。 以上、本年度は当初の予定通りに研究が遂行できた。
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