研究概要 |
本研究の目的は,半導体デバイスで用いるSi,GaAsウェーハの表面ミクロ構造および表面化学状態を赤外反射分光法で精密にかつ迅速に評価することによって,半導体製造プロセスにおけるウェーハ表面状態を原子レベルで制御する計測法を開発することである。 本年度は,前年度に引き続き、平成5年度に製作した真空用、溶液用、大気用赤外分光評価装置を用いて、Si表面の化学状態が様々な表面処理法によってどの様に変化するかを詳細に調べた。 Si表面をフッ酸溶液処理を施すと表面は水素で終端され化学的に不活性な表面になるが,その表面を大気中に長時間放置すると表面は徐々に酸化されていく。その酸化の過程を赤外反射分光評価法と光電子分光法で調べた。その結果,最表面のSi-H結合の酸化と自然酸化膜の形成には相関があり、表面水素が酸化によって減少していくと自然酸化膜の形成が促進されることが分かった。この相関関係を酸化モデルで説明した。 フッ酸溶液中のSi表面状態を溶液用赤外分光評価装置で調べた結果,表面の化学状態はフッ酸濃度によって変化し、フッ酸濃度が1%を超すと表面のフッ素濃度が急激に増加することが分かった。これは実際にシリコンウェーハ前処理を行う上で有用な結果である。また、フッ酸溶液処理を施して水素で終端した表面を重水の中にいれ、表面状態の変化を調べた。その結果、最初に水素で覆われていた表面が徐々に重水素で覆われていくことを見出した。これは、水素終端表面が水中の水分子と水素の交換を行っていることを示唆する新しい実験結果である。これらの結果は,本研究が開発した赤外反射分光法が半導体ウェーハ表面の化学状態の観察・制御に有効であることを示している。
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