研究概要 |
本研究では,高密度記録用磁気ヘッドのヘッド極近傍における漏れ磁界分布の高精度3次元計測技術の開発を目指した.以下に主な成果を示す. 1.反射電子ビーム偏向計測装置の設計・試作ならびに計測電子回路系の設計・試作:本研究のハードウェアの中核となる試料磁気ヘッド微動装置ならびに高精度電子ビーム位置検出器からなる反射電子ビーム偏向計測装置を設計・試作した.また,高周波パルス電子ビームの偏向量を計測するための同期回路系を設計・試作し,高周波漏れ磁界計測システムを構築することができた. 2.反射電子線トモグラフィの再構成アルゴリズムの開発・評価:本研究のソフトウェアの中核となる,高周波漏れ磁界の再構成にも拡張可能な再構成アルゴリズムを開発した.次に,本補助金により導入した高速ワークステーション(IBM375システム)によるシミュレーション結果から,本アルゴリズムによれば平均誤差20%程度で数千ガウスの磁界強度まで再構成可能であることを確認した. 3.漏れ磁界分布の画像化基礎実験:まず,今回試作した反射電子ビーム偏向計測システムを用いて、反射電子ビームの測定間隔,測定範囲,反射面-検出面間距離などに関する予備的実験を行い,予定通りの計測結果が得られることを確認した.次に,磁界分布が解析的に既知であるワンターンコイルを用いて反射電子ビームの計測偏向量から直流漏れ磁界分布の3次元再構成を行い,本研究目的をほぼ達成することができた. 以上のことから,納期の遅れなどのため,高周波漏れ磁界の再構成実験までには至らなかったが,これまで困難であった磁気ヘッド極近傍の3次元磁界分布計測の可能性を実験的に検証することができ実用化への見通しをつけることができた.
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