有用高温好気微生物を活用した環境修復・資源化プロセスの開発

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05555155
• 研究機関: 国立環境研究所
• 研究代表者: 稲森 悠平 国立環境研究所, 地域環境研究グループ, 総合研究官 (10142093)
• 研究分担者: 内田 達也 日立化成工業(株), 下館工場ERC課長 ; 上田 進 ジャパンクリエイト(株), 専務取締役 ; 須藤 隆一 東北大学, 工学部, 教授 (70109916) ; 井〓 敏彦 東北農業試験場, 地域基盤研究部, 室長 ; 森 忠洋 島根大学, 農学部, 教授 (20166359) ; 水落 元之 国立環境研究所, 地域環境研究グループ, 主任研究員
• キーワード: 高温好気プロセス / 好熱細菌 / Bacillus spp. / 高濃度有機排水 / 高度処理 / 養豚排水 / 焼酎排水 / 発酵

研究概要

本研究では、高温好気発酵法により有機廃棄物、高濃度有機廃液を完全処理するためのプロセスの開発を目的としている。高温好気発酵法の原理はコンポスト化と共通しているが、コンポストは汚泥、家畜糞等の有機固形廃棄物にモミガラ、イナワラ等を添加し発酵させるのに対し、本法は木質材等の水分調整材に液状有機汚濁物質を浸潤させ、それを高温好気微生物の活発な分解作用で短時間のうちに無機化することを特徴としている。
本年度はベンチプラントを作成し焼酎廃液、畜舎廃液等の高濃度有機性廃液を処理対象としBOD負荷量、通気量および適性な水分調整材の選定等の完全処理に関する重要な操作因子について検討を加え重要な知見を得ることができた。すなわち、本年度対象とした廃液については食品廃油等の熱源添加もしくは加温通気を行うことで天然資材である木チップ、木炭および人工資材である発砲プラスチックのそれぞれを用いた場合でも反応槽の温度は60〜70℃程度に保持され高温好気微生物は初期固体数の10^7N・g dry chip^<-1>から10^9〜10^<11>N・g dry chip^<-1>まで速やかに増殖した。その結果、注入した廃液の水分を完全に蒸発させることおよび有機物の完全分解を達成させることができた。さらに、有機物の完全処理に貢献する微生物はメナキノン-7をもつBacillus属であることも明かとなった。このことは、有機物の完全分解に貢献する有用な微生物の制御等の操作因子を明らかにすれば余剰汚泥、アオコ等の完全処理も可能であり人工資材を用いた水分調整材のリサイクルシステムも可能であると考えられた。
来年度は、引き続き本プロセスの適用可能な廃液、廃棄物のスクリーニングおよび最適な操作因子の検討を重ね、パイロットスケールにおいて実証試験を行い新たな廃棄物処理手法の確立を目指すこととする。

研究成果

• [文献書誌] 森 忠洋: "有機物緑農地利用のための課題" 用水と排水. Vol.35,No.10. 875-880 (1993)
• [文献書誌] 森 忠洋,劉 宝鋼,〓敬〓: "高温・好気法による高濃度有機排水処理 -有機物の完全酸化と蒸発-" 化学工学. Vol.44,No.11. 52-58 (1993)
• [文献書誌] Kyeoung-Suk Cho,Bao Gang Liu,Yoshihiro Agari,Kzuko Sumiguchi,Masaki Takagi and Tadahiro Mori: "FUNCTIONS OF THERMOPHILIC BACTERIA FOR THE COMPLETE TREAT-MENT OF ORGANIC WASTES IN THERMOPHILIC OXIC PROCESS" INTERNATIONAL ASSOCIATION ON WATER QUALITY. 435-438 (1993)
• [文献書誌] Bao Gang Liu,Tadahiro Mori: "COMPLETE TREATMENT OF SHOCHU PROCESSED WASTEWATER THERMOPHILIC OXIC PROCESS" 環境工学研究論文誌. 第30集. (1993)
• [文献書誌] 〓順珠,徐 胤〓稲森悠平,岩見徳雄,近山憲幸: "高温好気発酵プロセスにおける高濃度有機性排水の処理" 日本水処理生物学会誌. (1993)
• [文献書誌] 〓順珠,徐 胤〓稲森悠平,岩見徳雄,近山憲幸: "養豚排水の高温好気発酵プロセスによる処理特性" 日本水環境学会講演要旨集. (1994)