研究課題
本研究では、高温好気発酵法により有機廃棄物、高濃度有機廃液を完全処理するためのプロセスの開発を目的としている。高温好気発酵法の原理はコンポスト化と共通しているが、コンポストは汚泥、家畜糞等の有機固形廃棄物にモミガラ、イナワラ等を添加し発酵させるのに対し、本法は木質材等の水分調製剤に液状有機汚濁物質を浸潤させ、それを高温好気微生物の活発な分解作用で短時間のうちに無機化し且つ、余剰汚泥を発生しないことを特徴としている。本年度は高温好気発酵ベンチプラントを用い高濃度有機廃液としてアオコ、下水汚泥、畜舎廃液等を処理対象として熱量、BOD負荷、通気量等の完全処理に関わる操作因子について検討を加えると同時に余剰汚泥が発生しないメカニズムについても検討を加えた。その結果、本年度対象とした各種廃液の熱量は低く、有機物分解および水分蒸発を効果的に行うためには、高熱量の有機廃液との混合処理あるいは熱風通気が有効であることがわかった。処理過程のランニングコストを考慮すると、廃食用油等の高熱量の有機廃液との混合処理が最も効率的で、処理対象廃液の完全処理に必要な熱量/水比は2.0付近であることも明かとなった。また、余剰汚泥が発生しない理由として、有機物の完全処理に貢献する微生物はメナキノン‐7をもつBacillus属で細胞中に分解酵素であるCTAB(セチルトリエチルアンモニアグロマイド)を含んでおり、この働きで菌が死滅後に急速に分解されるためであると考えられた。来年度は、引き続き本プロセスの適用可能な廃液、廃棄物のスクリーニングおよび最適な操作因子の検討を重ね、パイロットスケールにおいて実証試験を継続する。さらに、これらの基礎的、応用的知見の総括、評価を行い実用的な装置開発への指針を立てるとともに操作、維持管理マニュアル等を作成し、環境修復、資源化プロセスとしての実用化を図ることとする。
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