研究概要 |
ニッケルの一部を異種金属で置換したり,組成比をAB_5あるいはAB_2からずらせた非化学量論組成の希土類系およびラーベス相水素吸蔵合金の水素吸蔵・放出時の圧力一組成等温線や充放電特性について検討した結果,希土類系合金ではニッケルの一部をモリブデンやタングステンなどの異種金属で置換すると置換量の増大につれて第2相が偏析するため水素電極反応に対する交換電流密度が著しく増大し,高率放電特性が向上することが見いだされた.また,ZrNi_2系ラーベス相合金においてもニッケルの一部をバナジウムやマンガンで置換し,水素平衡圧を適当な値に調整することで水素吸蔵量の大きな合金を設計することができた.一般に,ラーベス相合金は活性化が難しく,高率放電能も悪いが,ニッケルリッチな相を第2相としてさせたり,還元剤を用いる表面改質によってこれらの特性が改善できることが明らかとなった.一方,水素吸蔵合金上での水素電極反応については過渡法による測定から水素発生反応の素反応であるVolmer反応とTafel反応の速度が化学量論比によって変化することを見いだし,化学量論組成よりもB成分を増大させると水素ガスの発生が抑制され,効率よく充電ができることが明らかとなった.ニッケル-水素電池を負極材料に用いる希土類系およびラーベス相合金の高容量化および電極特性を向上させるための指針が平成5年度の研究によってほぼ確立されたが,特異な挙動を示す合金もあるので,それらについてはさらに原因を解明する必要がある.また,充放電試験から求めた放電容量が気相系における水素の吸蔵・放出時の圧力-組成等温線から評価した水素吸蔵量よりもかなり低い値をとる合金があり,この原因についてもさらに検討しなければならない.実用的な観点からは負極の耐久性が重要な問題であるが,高容量が得られても耐久性が必ずしも十分でない合金については劣化の機構をさらに検討しなければならない.
|