研究概要 |
本研究は、合成化学の立場から、研究代表者らが開発した層状ケイ酸塩からのメソ孔多孔体合成法に基づき、その反応メカニズムを検討し、これをフィードバックすることによって多孔体の細孔構造を広範に制御することを目的とする。平成5年度は特に長鎖アルキルアンモニウムイオン(RNMe_3^+)がイオン交換反応によりカネマイト(NaHSi_2O_5-nH_2O)層間に侵入し、層が3次元化する過程について、初期過程を詳細に検討した。出発物質Na_2Si_2O_5を30分間純水中に分散させ、カネマイトとしたものを未乾燥の状態で、アルキルトリメチルアンモニウム塩酸塩水溶液中に再分散し、湯浴上で攪拌を行った。攪拌時間1,5,10,30分、1,2,3時間ごとに分散液を分取し、それぞれを遠心分離・乾燥させた。生成物の分析にはXRD,固体^<29>Si-NMRなどを用いた。0.1mol/lのアルキルトリメチルアンモニウム塩酸塩水溶液を用い反応温度を様々に設定したところ、初めに30〜4.0Åのd値持つ最低角のピーク(d値はアルキル鎖長に対応して増加:ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、d=4.0nm;テトラデシルトリメチルアンモニウム、d=3.5nm;ドデシルトリメチルアンモニウム、d=〜2.7、〜3.0nm)が観察され、反応の進行と共に高角度ヘシフト(すなわちd値が若干減少)することが明らかとなった。一方、固体^<29>Si-NMRでもQ^3環境((SiO)_3SiO^-)からQ^4環境((SiO)_4Si)への変化が認められたことから、まず層間化合物が形成されたためにその基本面間隔に対応するピークが観測され、これが層同士の縮合により3次元化したために、最低角のピークがシフトしたものと推定された。一方、得られた多孔体の構造解析に関しては、TEM観察により生成物がハニカム類似構造をしていることが明らかとなった。また、TEM像と固体NMRの知見を基に、多孔体の構造モデルを作成することができた。
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