研究概要 |
超音波による微小領域の力学特性評価システムを開発するとともに,それを用いて材料の力学特性に関するスケールパラメータを評価することを目的として,超音波スペクトラム顕微鏡を用いた実験的アプローチを行った.本年度の結果は以下のとおりである. 1.超音波スペクトラム顕微鏡システムの改良 超音波反射率の測定は本研究において最も基本的かつ重要な事項である.そこで,超音波反射率の測定に用いる現有設備の超音波スペクトラム顕微鏡を改良した.その結果,空間分解能20〜100μm,周波数帯域10〜150MHzの測定が可能となった.また,測定した音波物性値から力学特性を定量的に評価するためのシステムを構築した. 2.表面波速度測定の高精度化 超音波反射率の位相変化からレーリー波などの表面波速度を高精度に評価する手法を開発した.表面波速度の測定精度は約±0.06%であった.これにより音速測定の再現性に関する問題は解消したと考えられる. 3.減衰評価法の開発 材料表面の微小領域における減衰を評価するための新しい手法を開発した.減衰特性は,スケールパラメータ評価における有効な補助情報となると考えられる. 4.予備実験 微小領域では結晶異方性の影響により,音波物性値が必ずしも材料の巨視的特性と同じであるとは限らない.そこで,測定空間分解能を20〜100μmの範囲で変化させて炭素鋼の表面波速度を測定した.その結果,測定領域の大きさが結晶粒径の数倍になると結晶異方性による音速の変化が確認された.このことは,表面波速度によるスケールパラメータ評価の有効性を示唆するものである. 以上の結果をもとに,次年度,さらに研究を進める予定である.
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