研究概要 |
本研究では,セラミックス被膜の密着性の向上を目的として,前処理としての切削加工とプラズマ溶射とを複合させたクリーンカット溶射法に,さらに後処理として研削加工をも複合化した溶射加工装置を開発した.2年間の研究成果をまとめると,以下のようになる. (1)清浄で化学的に活性な,かつ適当な温度と表面粗さを有する切削直後の金属仕上面に直接にセラミックス溶射を施すクリーンカット溶射法をさらに発展させた.具体的には,普通旋盤に取り付け可能な小型の溶射ガンを開発した.また溶射条件とクリーンカット溶射被膜との相関関係を吟味し,切削を応用した引っかき試験法によってクリーンカット溶射法の優位性を明らかにした. (2)下地溶射を行うために,現有のセラミックス溶射材粉末供給装置とは別に,粉末供給装置をもう一台,設備備品として購入した.これを用いて,クリーンカット溶射法に下地溶射を介在させた場合の効果を,種々のボンドコート材(Ni-Cr合金,純Ni,高Cr-Fe複合粉末,NiCrAlCoY複合体)について調べた.その結果,炭素鋼基材上のアルミナ被膜に対しては,Ni-Cr合金および高Cr-Fe複合粉末が最も適合すること,さらにクリーンカットを併用すれば密着強度が向上することを引っかき試験および熱衝撃試験によって明らかにした.15EA04:(3)研削加工を複合化することによって,クリーンカット溶射被膜の耐摩耗性が向上するだけでなく,摩擦係数も小さくなる.また,被膜の研削加工を溶射直後に乾式で行うことによって,被膜の密着強度が向上する場合がある. (4)溶射被膜生成時および熱サイクル試験時の熱解析を行い,下地溶射が加熱・冷却時の基材と被膜の熱膨脹率の差に起因する熱応力,熱き裂を緩和させる効果のあることを,定量的に明らかにした.
|