研究概要 |
1)気相中の酸素ポテンシャルの測定:Ar-H_2-H_2O混合ガスにより気相中の酸素ポテンシャルを調整し,一端閉管のムライト固体電解質先端にMo-Mo0_2混合粉末(標準極)を充填した酸素センサーにより,700〜1000℃における起電力を測定した。また,同時に,一端閉管のジルコニア(9mol%マグネシアを含む)固体電解質先端にMo-Mo0_2混合粉末を充填した酸素センサーによる測定を行い,ムライト酸素センサーによる結果と比較した。その結果,ArからAr-H_2-H_2O混合ガスに切り替えた後,ジルコニア酸素センサーは約1minで一定な起電力が得られたのに対し,ムライト酸素センサーは約20min後に一定な起電力値となった。これは,ムライトにおけるSiO_2とAl_2O_3の結合が強固なため,酸素空孔を介して酸素イオンの移動が低温では遅いことが理由と考えられた。 2)純鉄を,Al_2O_3るつぼを用いて,脱酸アルゴン気流中,1600℃で溶解した後,所定量のFe-Al合金を投下して撹拌した。これにCr-Cr_2O_3混合粉末(標準極)を充填した一端閉管のムライトおよびジルコニア(9mol%マグネシアを含む)固体電解質を浸漬し,起電力値を測定した。ムライトによる起電力値は,アルミニウム濃度分析値を用いてAl/Al_2O_3(Al_2O_3 活量=1)平衡から算出した値とよく一致した。ジルコニアによる起電力値は計算値より高く、固体電解質の肉厚が小さい(厚さ0.75mm)ことにより電気化学的酸素透過が生じていることが明らかとなった。円柱状のジルコニア固体電解質(長さ5〜10mm)円柱を用いた実験では,起電力値は計算値と一致した。このため,以後の実験では,円柱状ジルコニア固体電解質による酸素センサーを用いることとした。また,特に低酸素ポテンシャル域について,ジルコニア酸素センサーによる起電力値から酸素ポテンシャルを求める場合,電子伝導性パラメータによる補正が大きく影響をおよぼした。これに対し,ムライトの場合は電子伝導性パラメータが極めて低い(平成5年度の研究結果)ため,電子伝導性パラメータによる補正を必要としなかった。 3)アーク炉で予め溶製したFe-0.0009〜1.1mass%Al合金を,Al_2O_3るつぼを用いて,脱酸アルゴン気流中,1600℃で溶解した。これに,一端閉管ムライトおよび円柱状ジルコニア(9mol%マグネシアを含む)固体電解質を用いた酸素センサーを浸漬し,起電力値を測定した。この際の酸素濃度とアルミニウム濃度の関係は,Al/Al_2O_3(Al_2O_3活量=1)平衡に対応するより高酸素濃度側に偏位し,即ち,過飽和となった。ジルコニア酸素センサーによる起電力値は酸素濃度に対応し,ムライト酸素センサーによる値はAl/Al_2O_3(Al_2O_3活量=1)平衡に対応した。このことから,ムライト固体電解質をアルミニウムセンサーに適用できることがわかった。
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