研究概要 |
飽和溶解度以下の濃度においても,細孔内に発生し得る溶質の相分離現象である“毛管相分離現象"に着目した,膨潤性/収縮性多孔質材料に適用し得る液浸漬状態でのin situ細孔特性評価手法の開発について,本年度は非膨潤固体を用いて検討を行い,以下の結果を得た. 1.多孔性固体における吸着等温線の測定 数種の多孔性固体につき,全自動ガス吸着装置を用いてその表面積や細孔分布を測定し,解析の基礎とした.各々の材料について,数種の芳香族化合物を吸着質として,回分吸着法により液相吸着等温線を実測した.得られた等温線は細孔容積に匹敵する吸着量を持つとともに,気相で言うところのBDDT分類IV型を示し,毛管凝縮と類似の現象である毛管相分離現象の存在が明確に示された. 2.非多孔性固体における吸着量の測定 上記多孔性固体と同様の組成を持つ非多孔性固体につき,全自動ガス吸着装置により表面積を同定すると共に,水中での芳香族化合物に対する吸着等温線を測定した. 3.解析結果 多孔性固体での吸着等温線は,非多孔性固体上の吸着量のみでは説明できず,毛管相分離現象の本質的寄与が明らかとなった.さきに我々が提案している臨界半径の表現式と表面吸着量をもとに,Dollimore-Heal法と同様の手順で計算機を用いて解析し,液相吸着等温線からの細孔分布を求めた.これを窒素吸着から求めたものと比較したところ定性的にも定量的にも良好な一致が認められ,液相吸着等温線からの細孔特性の妥当性が数種の系で検証された.また,表面吸着量は,用いた材料の範囲で顕著な差がなく,気相での窒素吸着のユニバーサルカーブのごとき一般化の可能性が示唆された.一方で,芳香族溶質では表面吸着の寄与は比較的大きく,この測定精度が,細孔分布決定に影響することが計算機を用いた解析で明らかとなった.
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