研究概要 |
本研究では、逆相ミセルを用いたタンパク質抽出のために種々の界面活性剤分子を合成し,逆相ミセルを用いたタンパク質抽出のために最適な界面活性剤の分子設計指針を明らかにする目的で実験を行い、以下のような研究成果が得られた. 1.溶解性の観点からの分子設計 タンパク質抽出のための有機溶媒として活性保持の観点から脂肪族の溶媒に限られる.無数に存在する市販あるいは合成界面活性剤について,そのような溶媒に対する溶解性を検討すると、その数が極めて限定されることが分かった.以上のような観点から界面活性剤の分子構造としては,疎水性向上のために疎水部に不飽和基や枝別れを有する基を導入する必要がある.また疎水性の観点から1本鎖より2本鎖が望ましい. 2.逆相ミセル形成能の観点からの分子設計 有機相に溶解した界面活性剤はいずれも水相との接触により逆相ミル 形成することが分かった.しかしながらこの場合の最大の問題は相分離性の良さである.いわゆる中間相としてエマルションを界面に生じる場合がある.タンパク質の抽出に使用する場合は,Co-Surfactantの添加等を必要とする場合がある. 3.タンパク質の抽出能の観点からの分子設計 タンパク質の抽出の観点から重要なことは,全く同様な逆相ミセルの挙動を示した界面活性剤が非常に異なるタンパク質の抽出挙動を示す点である.つまりこのことは同一の親水基を有する界面活性剤においても,逆ミセル形成能とタンパク質の抽出能が一義的に相関できないことを示している.また,疎水基の微妙な構造の変化やバランス,界面活性剤の分子の大きさや形がタンパク質の抽出と密接な関係があると示唆される.現在は、逆相ミセルによるタンパク質の抽出機構についての詳細な検討を行っている.
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