研究概要 |
半導体光触媒を用いた光殺菌システムにおいて、酸化チタン微粒子(アナターゼ型:ルチル型=7:3,平均粒子径=21nm)が優れた殺菌作用を示すことが明らかとなった.また,殺菌される微生物種も,大腸菌,酵母などではきわめて効率的に死滅することが分った。試験された微生物種の中では,Bacillus stearothermophilusの胞子が最も強い耐性を示したので,酸化チタン懸濁系において,本菌の胞子に対する細菌システムに関し集中的に検討した.その結果,以下の知見が得られた. 1)高圧水銀灯を用いた光照射下(波長域:365〜579nm)において,有効な胞子滅速度を得るためには,酸化チタン微粒子と空気の通気による溶存酸素の存在が必要であった.2)光反応槽内での平均光強度が大きくなるにつれて胞子死滅速度は向上し,また,溶存酸素は胞子に対する攻撃種となる酸化剤ラジカルの生成に寄与することが推定された.3)酸化チタン濃度5×10^<-2>kg/m^3のとき,胞子死滅速度が最大となり,これ以上の酸化チタン濃度では,入射光の散乱効果により槽内の光吸収量が減少するため,胞子死滅速度は低下した. 4)胞子の死滅機構として,酸化チタンの光励起によって生成される酸化剤ラジカル濃度と胞子濃度に関する2次反応速度論を適用し,さらに,胞子内に酸化剤ラジカルによって損傷される標的を想定した1ヒット性多重標的モデルを組み合わせることによって,胞子死滅過程が解析可能となり,死滅速度に対する光強度の効果を定量的に相関することができた.
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