研究概要 |
本研究の目的は、腫瘍MRI(NMRイメージング法)マーカーとして、組織選択性と良質なコントラスト画像を提供する金属キレート(特に、ポルフィリンキレート)に着目し、動脈硬化症に対するMRI診断薬の開発を行なうことにある。先のポルフィリンスルホン酸誘導体では、生体への影響や病変部組織への浸透性などの点に課題が残されていた。 本年度は、リン酸エステル基を有する新規マンガン-ポルフィリンキレートを3種類合成した。すなわち、5,10,15,20-テトラキス[4-(ホスホノオキシ)フェニル]ポルフィリン、5,10,15,20-テトラキス[3,4-ビス(ホスホノオキシ)フェニル]ポルフィリン、および5,10,15,20-テトラキス[3,4,5-トリス(ホスホノオキシ)フェニル]ポルフィリンである。これらは、スルホン酸と比較して、生体に親和性をもち、動脈硬化症による「石灰化」のモデル担体としての炭酸カルシウムへの吸着特性に優れているものと予想された。実験結果は、ポルフィリン1分子に対して8個のリン酸エステル基を有するものが、炭酸カルシウムへの最大の吸着量(48%)を示した。また、12個リン酸エステル基を有するものは、動脈硬化症早期病変部モデルのデオキシコール酸に54%吸着することが分かった。以上の成果は、日本化学会第66秋季年会において発表した。また、同様の内容を日本化学会誌に投稿し受理(1994年4月号)された。 次年度は、実用化レベルの造影剤の開発を目的として、MRI感度の高いマンガン・ガドリニウム等の常磁性金属を含有するポルフィリンキレートの合成を行なう。更に、実験動物への投与およびMRI画像の測定を行なう予定である。
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