研究概要 |
新しい高速応答性液晶用キラルドーパントとしてβ-ヒドロキシケトン(1),1,3-ジオール(2),1,3-ジオキサン(3),1,3-ジオキサン-2-オン(4),およびフルオロアルキル置換フェニルピリミジン(5)を設計し,それぞれ合成した。これらを母体液晶に数%添加したものの液晶物性を検討した。2〜4のシン体を添加した場合,大きな自発分極(6〜34nC/cm^2)を示すとともに応答も速かった(〜100μs)。しかし,1や2〜4のアンチ体を添加すると,ほとんど自発分極を示さず,応答も非常に遅くなった。自発分極の大きさとキラルドーパントの構造との相関を,分子軌道計算をおこない検討した。その結果,以前からわれわれが提唱していたとおり,極性基の配向が揃ったときに大きな自発分極が生じることが分かった。こうしてキラルドーパントの設計指針が確立したので,コンピューターによる分子設計が合理的に行なえるようになった。一方,(3-フルオロアルキル)フェニルピリミジン5を添加したものは,自発分極は大きくないが,その割には速い応答を示した(<100μs)。フッ素を導入すると化合物の粘性が下がったため,応答が速くなったわけで,この設計指針は高速応答実現に有効であることが分かった。
|