研究概要 |
将来の表示材料として注目されている強誘電性液晶の実用化をめざし,合成研究を行ってきた。特に,(1)コア,不斉炭素,極性基の三者をできるだけ近づける,(2)不斉中心を環構造に組み込んでコアとしての役割をもたせると同時に極性基の配向を規制する,(3)極性基を複数個導入する,(4)粘性を高めるカルボニル基やシアノ基に代えて粘性を下げるフッ素を極性基として活用する,などの設計方針に基づいてさまざまな新規強誘電性液晶化合物を合成し、その物性を評価した。こうして不斉中心とシアノ基などの極性基をベンジル位に同時に固定した液晶が大きな自発分極を示すことを見つけた。さらに,不斉中心をベンジル位に固定するとともに環構造に組み込んで配座を固定したγ-ラクトンやシアノシクロプロパン誘導体では,さらに大きな自発分極を示すことがわかった。またこの研究途上において,自発分極の符号・大きさがキラルドーパントの絶対配置・配向と深く関係していることを見つけ,符号を調べればキラルドーパントの絶対配置を一義的に決定できることを明らかにした。一方,高速応答をめざして低粘性でかつ大きな自発分極を示す液晶化合物として含フッ素光学活性化合物を設計し合成した。その結果,フルオロアルコキシル基やフルオロアルキル基を有するフェニルピリミジンが低粘性でかつ高速応答を示し,液晶化合物として極めて有用であることを見つけた。こうした本研究の成果は,これまで系統的な分子設計や合成研究がなされていなかった液晶化合物の研究・開発に対するひとつの有効な指針を提供するものである。
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