小型・軽量・高エネルギー密度の次世代一次電池として期待される「空気電池」には、酸素選択し、窒素・水蒸気・二酸化炭素のバリヤとなる高分子膜の創製が鍵となる。本研究では、空気電池に組み込む酸素選択透過膜を新しく合成し、一次電池としての電池特性を試験、高エネルギー密度で環境保全型の一次電池として開発するための要件を明らかにすることを目的としている。本年度は、空気から酸素の選択結合席としてポルフィリン錯体を含むフッ素や塩素系ポリマーを合成し、その薄膜の酸素透過性と水蒸気バリヤ性を実証し、これを組み込んだ半電池試験より、空気電池を構成する可能性と実用化への課題を明らかにした。 (1)第2年次までで選定されたビニルイミダゾール含有ポリメクリレート、フルオロメタクリレート、塩化ビニリデンなどに高濃度でポルフィリン錯体を担持させた膜を量合成した。(2)同じく本研究で改良して組み立てた半電池セルに装着し、酸素透過係数を測定し、ポルフィリン導入により酸素透過が20倍加速されることを確認した。(3)水蒸気透過性を透過重量法により測定した。フッ素膜では水蒸気バリヤ-性が100倍向上した。高分子種、錯体濃度、膜厚など諸因子と酸素、水蒸気透過性の相関を整理した。(4)連続放電性特性などの成績を取り、高分子マトリックス部の物性、膜としてのミクロ構造、ポルフィリン錯体の濃度と分布、酸素親和性と作動寿命、膜厚と複合膜の可否など、因子ごとに考察した。成果を統合して、空気電池を実用化するための膜設計の手順を取りまとめた。
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