研究概要 |
本研究は、代表者らが近年検討を行ってきた、ペプチドのアミノ基末端をフェノール性水酸基を有するシッフ塩基により修飾したものを配位子とする、ペプチド-金属錯体を触媒として用いる不齋合成プロセスに関するものであり、金属上での反応においてペプチドと金属原子の相互作用を利用することにより、不齋誘起をおこなう。このアプローチは代表者らにより独自に行われてきた、他に類例のない独創的なものである。特に、生理活性物質の立体選択的合成に用いることを目指す高度の不齋シアノヒドリン合成(アルデヒドの不齋ヒドロシアノ化)に成功したことは、酵素法を除いては知られておらず、実用化が期待される。この反応以外にも、代表者らはペプチド-金属錯体として用い、アルデヒドの不齋シリルシアノ化、アリルアルコールの不齋エポキシ化、アルデヒドの不齋アルキル化において高い選択性が得られることを見いだした。また、これらの不齋誘起のメカニズムを^1H-NMR,^<13>C-NMRにより詳細に検討して、より選択的、効率的な触媒の設計について明確な指針を得ることができた。アルデヒドの不齋ヒドロシアノ化の応用として、ベータ-アルケニルアルデヒドからの不齋シアノヒドリン合成とそれに続く高立体選択的な[3、3]シグマトロピック・キラリテイー移動により、光学活性ガンマーシアノアリルアルコールの容易な合成に成功した。このものは数多くの天然物、生理活性物質の合成中間体として有用である。
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