研究課題
非線形光学素子はレーザー光の波長を1/2(SHG)または1/3(THG)に変換する光高調波発生などの機能を有している。この中でもSHGはコンパクトな可視光レーザーを実現させる手段として現在大変注目されている。有機材料の中には現在デバイスとして使用されているニオブ酸リチウムより一桁以上も大きな性能指数を有するものがあることから、導波路デバイス化が盛んに進められているが、いまだに実用化されたものはない。これは効率の良い波長変換を達成するのに必要な位相整合がうまく取れないことに起因する。導波路の位相整合はモード分散を利用して達成することができるが、実効屈折率の膜厚依存性が大きいために、導波路の膜厚を位相整合膜厚から2nm以内に制御しなければならない。我々はこの位相整合条件を緩和するために5層型のSHG導波路素子を作製した。この素子は非線形光学活性層の間に線形光学層を挟んだ構造を取っており、それぞれの非線形層の感受率の符号を反転させることにより重なり積分を大きくすることができた。実用上一番問題となる位相整合の厚み許容度(FWHM)は基本波と高調波のモード分散曲線の交差をゆるやかにすることにより改善できる。非線形層間に適当な屈折率の線形層を導入することにより各モード分散曲線スロープをほぼ等しくすることができた。ドコシロニトロベンゼン尿素(DONPU)を非線形層に、ポリイソプロピルフマレート(PDiPF)を非線形層として用いることによりFWHMは65nmに広がった。次年度以降は半導体レーザーの波長変換を可能にするため、より非線形光学定数の大きい材料を合成し、チャネル型導波路の作製を目指す。
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