衛星の軌道変更、姿勢制御あるいは惑星間トランスファには、比推力が大きく(500〜10000s)、高速度増分に適した電気推進ロケット(ET)が用いられるようになってきたが、推力は小さく、今後多様化するミッション要求の実現にはもう少し推力の大きな制御用モータを開発しておく必要がある。本研究では、衛星の姿勢制御などに用いられる小推力スラスタのプロペラントに固体推進薬を用いる方法を提案し、試作モータの燃焼試験からその実用の可能性や利用範囲を検討したものである。 提案したモータは、自燃性を抑制された固体推進薬を自燃性の無い圧力領域で用い、その燃焼の制御はアーク放電の開始・調節・停止で行なうものである。今回の試作モータでは、アークをまずパイロットチャージ(PC)と呼ぶ昇華固体の表面に生じさせ、そのパイロットガスを先の主推進薬(メインチャージ:MC)に照射する方式をとった。MCにはオキサミドなどの燃焼抑制剤を混入させたものや燃料過多のコンポジット推進薬を、PCにはフッ素樹脂やその過塩素酸アンモニウムとの混合物などを用いた。その結果、幾つかの組合せで優れた燃焼制御性が得られ、また実験結果から推定される比推力、推力の値から本概念が有効であることが認められた。また、今回の実験で燃料/酸化剤の配合割合や過塩素酸アンモニウムの粒度などを変更した場合の推進薬固有の燃焼速度や可燃限界の測定も行ったが、これまで通常の推進薬で報告されていたのとはかなり異なる特性も得られ、今後の研究に興味深い事柄と考えている。
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