本研究の端緒は6年前から始まり、まず、櫓漕の流体力学的性能を明らかにするために、模型の櫓を用いて、人間が漕ぐのと同じ様に自動的に漕ぐロボットを製造する事から始めた。そのロボットの完成に3年かゝたが、それを用いた水槽実験によって、櫓が大変効率のよい優秀な推進器である事を実証することができた。そこで、この成果を活用するために、新式の推進装置として横行式翼列推進器を考案し、水槽実験でその性能を調べたが、所期の高性能を発揮するには程遠く、最終年度の本年度は、改良の目途をつける事を目標とした。本装置の最大の欠点は、左行と右行とで、水を切る翼の角度、即ち、前進方向に対する翼板の傾斜角(迎角に相当する)を反転する時に衝撃的に大きなトルクを必要とし、且つ翼板に過大な抵抗が作用する事である。この欠点の改良は容易でなく、順次改良を積み重ねて本年度はやっと流体力学的な性能のデータが収録できる時まで達した。解析の結果によると、まだまだ過大なトルクと抵抗の欠点は根本的に取り除く事はできず残っているが、20%程度の効率で漕げる事が分かった。今後は、この過大なトルクと抵抗が開き角を反転する際に生じないように、装置を造りかえて、高性能推進器の開発を達成する所存である。
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