研究概要 |
鉱物への陰イオン吸着の基礎的研究として、銅および黄鉄鉱クラスター上へのメルカプトベンゾチアゾールの吸着を分子軌道法によって研究した。メルカプトベンゾチアゾールの電子状態はチオカーボニルの硫黄と5員環の窒素に電子が多く分布しそれら原子が大きな負の荷電を帯びるが、5員環中の硫黄は中性に近い。メルカプトベンゾチアゾールから電子が銅及び黄鉄鉱に流れて両者の間に結合を生ずる。その相互作用は銅クラスター表面上の銅原子、黄鉄鉱クラスター表面上の鉄原子がメルカプトベンゾチアゾールの2つの硫黄の間に位置する場合と硫黄と窒素の間に位置する場合とで異なる。前者の場合、2つの硫黄と銅及び鉄原子の間に強い結合を生じ、後者の場合硫黄と窒素各原子と銅及び鉄原子の間に強い結合を生ずる。吸着の安定化エネルギーは前者において大きい。ゼオライトへの水蒸気吸着はゼオライトの乾燥温度が高い程、水のモル吸着熱は大きく、同種、同条件のもとでは水の吸着量が多い程水のモル吸着熱は減少しており、吸着初期の水蒸気程ゼオライトと強いエネルギーで吸着している。天然ゼオライトは合成ゼオライトに比べて一般的に水蒸気吸着熱は小さい。これは前者の吸着サイトの濃度が後者のそれより小さいものと考えられる。天然ゼオライト(石見産、衣川産、蔵王産)のLi,Sr,Ag,Co,NH^<4+>などの陽イオン吸着が検討された。Liに対しては石見産ゼオライトが他のゼオライトより吸着性が優れている。また1M NaCl溶液処理によるNa-ゼオライトはLiの吸着量を1.30〜1.85倍に増加する。Sr,Ag吸着は濃度が高くなるとその吸着量を上昇する傾向を示す。Co吸着量は細孔径が大きくなると増加するが、合成ゼオライトは逆の減少を示した。従って表面積当りの細孔の数も考慮せねばならない。それぞれの陽イオン吸着におけるゼオライトに対する吸着等温線は形式上フレントリッヒ型を示し、不均一表面上の吸着と同じになる。吸着はゼオライト中の陽イオンとの交換と考えられるが必ずしも化学量論的なイオン交換ではない。これら陽イオン中NH^<4+>は天然ゼオライト上に短時間で吸着し、特に石見産ゼオライトが高い吸着性を示す。
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