研究概要 |
本研究はスポット画像,ランドサットTM画像という解像度が異なる衛星画像を組み合わせ,断裂系の解析と土地利用環境の解析への応用を図った。成果をまとめると次のようである。(1)人工衛星画像から断裂系を精度良く抽出するために線素追跡アルゴリズムを考案し,これをランドサットTM画像,スポットPanchromatic画像に適用したところ,山陰や太陽照射方向に平行する方向という画像のコントラストの弱い部分からも多くのリニアメントが抽出できることが明らかとなった。(2)人工衛星画像と数値地形モデルとをアフィン変換によって重ね合わせ,リニアメントとして現れる断裂系の走向・傾斜をベクトル計算から求める手法を考案した。これを坑道壁面においてジョイントの計測が行われている花崗岩体のランドサットとスポット画像に適用したところ,各画像のリニアメントの卓越方位はジョイントの卓越方位とほぼ一致した。これから断裂系の方位分布に関する自己相似性の存在が明らかとなった。(3)人工衛星画像を表層地質,土地利用状況に応じて分類するための手法を検討したところ,従来のクラスター分析法では各グループを代表する教師の選び方に分類精度が支配されるので,これを改善するためにニューラルネットワークを応用した分類手法を開発した。(4)観測時期が異なる複数の衛星画像の分類処理によって都市の発展域を見出し,これに地盤情報データベースの解析から特定された地下水位の低下域を重ね合わせたところ,両者が対応している部分が多いことかを明らかにした。(5)分光放射計を用いて各種岩石・鉱物の分光反射特性を求めたところ,風化の程度や表面温度・含水比の影響はいずれも波長2215nmの中間赤外域に顕著に現れることが明らかとなった。また,花崗岩の反射スペクトルは含水比に敏感であるのに対し,玄武岩は表面温度に敏感であること,および凝灰岩においては反射スペクトルに及ぼす両者の影響は小さいことがわかった。
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