研究概要 |
作物体内の水分状態を圃場条件下で簡易かつ正確に判定する目的で,作物体の表面電位の測定装置を試作し,種々の作物について,表面電位の測定を行い,装置の妥当性を検討した. 1.試作した表面電位の試作装置は,一対の銀一塩化銀電極およびこれに接続する前置増幅器からなる.作物体のインピーダンスは著しく高いため,増幅回路には入力抵抗が10^<12>ΩのプリアンプICを用いた.作物体の茎表面の2点に各1個の電極を接触させ,それぞれの前置増幅器を介して2点間の電位差を検出し,ペンレコーダおよびデータロガーに出力,記録するものとした. 2.種々の養分条件で水耕したイネおよび土壌水分条件の異なるポットで栽培したバレイショとインゲンマメについて,試作装置を用いて表面電位を接続的に測定した.異なる環境条件で栽培した個体間には,100mVをこえる表面電位の差異が検出された.また,一部の測定では,表面電位に規則的な日周期が認められた. 3.試作装置を用いての,作物種あるいは環境条件を異にする数十回におよぶ表面電位の測定により,測定結果の再現性に関する幾つかの問題点が明らかとなった.すなわち,作物体のインピーダンスが当初の予想よりも高かったため,測定装置の作成の際に生じる増幅回路間の微少な差異が,測定結果に影響した.また,電極の形状や組成の影響で作物体と電極との接触面に起電力が発生し,測定結果のばらつきの原因となった. 以上のことから,本研究の試作装置により,作物個体間における栄養状態あるいは水分状態の差異を,表面電位の差異として検出できるものと考えた.しかし,本研究の最終目的である圃場条件下での簡易かつ正確な測定を可能とするためには,試作装置の改良ならびに測定手法についての検討がさらに必要である.
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