平成6年度の研究計画は培養細胞において選抜されたアルミニウムイオン耐性と予想されるカルスより再分化個体を得、さらにそれより得られた種子、またその2代目種子において酸性土壌耐性形質がみとめられるかを土耕、水耕試験により評価することであった。 まず典型的な酸性土壌である宮城県鳴子町より採取された火山灰(黒ボク)土壌において選抜個体が非選抜個体に比して良好な生育を示すかについて土耕試験を行なった。ニンジン幼植物体は初期生育がかなりばらつく傾向にあったため、あらかじめ芽出しを行ない、均一になるように個体を選んで土壌に移植し、生育経過を観察した。その結果、D1より得られたD2種子(2代目)においても特に根の生育が選抜個体において明らかに非選抜個体に比べて良好であった。このことから、選抜個体は2代目であっても酸性土壌、すなわちアルミニウムストレスに耐性であることが示され、耐性形質は安定で遺伝しうるものであることが明らかになった。また水耕栽培試験においては、選抜個体の根は非選抜個体に比べてアルミニウムイオンを吸着しにくい性質を持つことがわかった。このようにアルミニウムストレス選抜により培養細胞の段階で得られたアルミニウム耐性株は実験の酸性土壌においても耐性を示すことから、組織培養を応用した育種の手法が有力であることが証明された。 またアルミニウムストレスのメカニズムを培養細胞しベルで採った。本研究ではアルミニウムストレスによる過酸化脂質の生成について検討を加えたが、培養条件により著しく異なる結果が得られ、アルミニウムストレスと過酸化脂質の生成の因果関係は明らかではなかった。
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