研究概要 |
好アルカリ性バチルス属細菌YaB株の生産するアルカリ性エラスターゼはセリンプロテアーゼの一種で高アルカリ域に至適pHをもち、硬蛋白質エラスチンをよく分解する。アミノ酸配列上、サチライシンBPN'と約55%のホモロジーを有するのでサチライシンYaBとも呼ばれている。サチライシンBPN'の活性中心Ser221をCysに変換したものはプロテアーゼ活性を失うが、ペプチド結合能は保持しておりペプチドリガーゼとして注目されているが、その生産にはいくつかの難点がある。そこでサチライシンYaBを材料として活性中心アミノ酸Ser218をCysに変えたチオールサチライシンYaBの生産とその性質検討を行なうことにした。指定位変異によりSer→Cysの変換を行なったエラスターゼ遺伝子を持つプラスミドを枯草菌の主要2種プロテアーゼ欠損変異株DB104に導入しその生産する蛋白質をゲル電気泳動でしらべたが、本来の分子量約26,000のところにバンドが認められなかった。そこで枯草菌の6重プロテアーゼ欠損変異株WB600に導入したところ、誘導基質依存で菌体外に分子量51kdの蛋白質を分泌していることが判明した。これはプロ体としても異常に分子量が大きく、何か異常な構造をした中間体ではないかと推測される。この想定中間体に活性型サチライシンYaBを作用させると分子量約26,000の想定されるチオールサチライシンYaBのサイズになる。 一方、従来から枯草菌におけるサチライシンYaBの生産は難しく、高度の発現系が完成していない。サチライシンYaBの遺伝子aleを持つプラスミドを導入した枯草菌DB104のトランスフォーマントの中からカゼイン寒天培地上で大きなハローを形成するものが時に出現するので、これらの株について調べたところいずれもプラスミド上に変化があり、aleの下流領域が欠失していることが判明した。意図的にこの下流領域を欠失させても同様にサチライシンYaBの生産が約6倍上昇することが分かった。
|