研究概要 |
ピロロキノリンキノン(PQQ)を補酵素とするPQQ酵素、キノプロテインは非可逆的に基質の酸化を触媒するので、バイセンサーとしての利用が急速に広まってきた。キノプロテインのうちでもPQQとヘムcの両方を補酵素として含む酵素、キノヘムプロテインは臨床検査用酵素として特にすぐれている。本研究ではキノヘムプロテインを水溶性画分に生成する微生物を広く検索して、新規なキノプロテインを開発して酵素診断の向上に資することを目的として研究をおこなった。本研究では、とくにアルコール脱水素酵素(ADH)とグリセロール脱水素酵素(GLDH)の開発に焦点をしぼった研究をおこなった。そして、これらのキノプロテインがバイセンサーとして好適は特徴を有していることを酵素化学的に明らかにすることで、これらの酵素が関係分野へ応用可能なことを実証する。 Pseudomonas putida HK5を土壌から分離した。本菌を種々なアルコールを培養基質として生育させて、そこに生成されるキノプロテインの性質を調べた。その結果、エタノールで培養すると、メタノール脱水素酵素に類似したヘムcのないADH(ADH-I)が強く誘導生成された。n-ブタノールに育成させると、ヘムcを有して広い基質特異性のあるADH(ADH-II)が著量に発現生成された。さらに、グリセロールまたは1,2-プロパンジオールに生育させると、ヘムcをもつ別のADH(ADH-III)が生成され、グリセロールにきわめて高い基質特異性を示すことが明らかとなった。ADH-IIはアルコールの定量に、ADH-IIIはグリセロールの定量、すなわち中性脂肪の定量に好適であることを、精製酵素を使用して、その動力学的諸性質、酵素化学的諸性質、物理化学的諸性質を明らかにすることによって示した。
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