研究概要 |
従来さまざまな花の鮮度保持剤が開発されてきたが、コストや副作用を考慮すると決定的なものはない。現在業界で最も普通に使用されているチオ硫酸銀は花持ち性に優れ、良い薬剤ではあるが、重金属を使用している点で環境への影響や貴重な金属資源の浪費につながる恐れもあり、近い将来何らかの方法で解決されなければならない。本研究課題は1980年代に入り急速に発展したエチレン生合成に準拠して、エチレン前駆物質1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸(ACC)の類縁体を多数合成し、これらのエチレン生成阻害効果を利用し、無害で有効な花の鮮度保持剤を開発することを目的としている。 1.すでにコロナミン酸の立体異性体の合成は完了しているのが、経路がやや長いこと、従ってコストも高いなどの問題があるが、取り敢えず、多少の改良により、多数のACC類縁体を合成した。 2.合成したACC類縁体を用いたカーネーションの切り花に対する延命効果を検討した。その結果、(+)-(1S,2R)-アロコロナミン酸に高い効果がみられ、標準より倍(12〜13日)の延命効果が観測された。 3.一方ラセミ体の(±)-アロコロナミン酸に24時間浸漬したカーネーションでもかなりの延命効果(10日)がみられた。 4.(-)-(1S,2R)-アロコロナミン酸では延命効果(10日)はみられたものの、花軸の折損がみられた。 5.他のアルキルアミノ酸類には特筆すべき効果はみられなかった。
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