研究概要 |
木材は,樹種,同一樹種でも部位によって浸透性が著しく異なる材料で、浸透の困難な心材や,難注入材といわれる樹種は,従来一般的に行われている加圧注入によっても材料の表面数mmを注入できるにすぎない.しかしながら,森林,樹木は環境浄化機能が大きい資源であるために,資源材料の利・活用においては,長期にわたり有効に活用することの重要性が高まり,そのために木材に防腐処理や,化学加工処理を施し耐久性や機能性を高めて利用することが積極的に検討されている.そのためには,樹種や部位に関係なく,しかも迅速かつ内部まで均一に薬液を注入することが必要となる.本研究では,上述の課題を克服するために,新しい浸透性の向上技術,すなわち,注入処理前に木材に60%以上におよぶ大変形を与える,いわゆる圧縮前処理法を提案し、その有効性を示すとともに,注入法の最適条件,適用範囲,技術の汎用性について検討したものである.得られた結果は,以下の通りである. 1)難注入材といわれるカラマツ,ベイマツ,スプル-ス材の長さ1m,厚さ10cmの材料であってもほぼ完全に溶液の注入が可能である。 2)圧縮前処理を施すとあらゆる圧縮条件において,またあらゆる樹種において注入量が増大する. 3)圧縮処理の最適条件は樹種によって異なる.すなわち,圧縮するときの温度,含水率がいずれも高い方がよい樹種(スギ),温度を80℃以上にするとむしろその後の注入量が減少する樹種(ベイマツ)などがある. 4)圧縮処理材の材質は,60%以上におよぶ圧縮大変形であっても,その回復材の強度は最大10%程度の極めて小さい低下である,などがあきらかになった. 以上のことから,圧縮法による注入性の向上は有効で,しかもその各種条件について具体的に明らかにしたので,今後実用に即した大型機械の試作が具体的に進められる必要がある.
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