乾燥地域の潅漑システム管理と環境改善のための新手法の開発に関する研究〜アラール海流域におけるケーススタディ

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05556040
• 研究機関: 近畿大学
• 研究代表者: 筒井 暉 近畿大学, 農学部, 教授 (90207415)
• 研究分担者: タナンゴナン J. 近畿大学, 農学部, 助手 (20247969) ; 大上 博基 愛媛大学, 農学部, 助手 (80213627) ; 渡辺 紹裕 大阪府立大学, 農学部, 助教授 (50175105) ; 大槻 恭一 鳥取大学, 農学部, 助教授 (80183763) ; 荻野 芳彦 大阪府立大学, 農学部, 教授 (60032992)
• キーワード: アラール海 / 潅漑 / 環境問題

研究概要

中央アジアのアラール海流域では、1960年代から数百万haに及ぶ農地開発とそれに伴う大規模な潅漑水利開発が行われ、その結果アラール海は従来の水面積の3分の1に縮小した。開墾された農地の一部は塩類化し、河川デルタの湿地帯は乾燥によるツガイ大森林の消滅、塩を含む砂嵐による住民の健康被害の増大が問題になって来た。これらの地球的規模の環境問題は、アラール海流域での過剰な農地開発と水資源開発、粗放な水管理に起因していると言われてきた。本研究ではアラール海流域の大規模潅漑地帯における、農業、とりわけ土地利用・作付体系と、農業水管理の実態を、現地調査および飼料分析に基づいて、1)下流デルタ潅漑地域における潅漑効率の実態、2)下流デルタ潅漑地域における水田-畑ロ-テーション潅漑の水管理という2つの視点から検討・考察を行った。
過去3ケ年におよぶ研究により、アムダリア川下流デルタ地域のヌクス、シルダリア川下流域のクジルオルダ地域のコルホ-ズやソフホ-ズ群の用水管理・栽培管理・潅漑面積・蒸発散量・実績取水量などの水利使用の計画と実際を分析・考察した。この結果、この地域の潅漑効率について、現地の情報を活用して、大枠を推定確認することができた。潅漑効率の向上には、水路構造物の整備・改修といったハード面の対応のみならず、水管理組織、管理体制と言ったソフト面の対応も重要である。
また、水田-畑ロ-テーション潅漑の水管理については、水田稲作を中心とする営農・潅漑体系の水管理上の意味、及び関連する塩類化・湛水化などの問題との関係の、基本的な理念・構造を把握することができた。この場合、作付け体系を、旧ソ連の綿花、水稲を中心としたものから、需要に応じた体系に多様化する必要があり、作物毎の水需要、除塩用水量、収益性を考慮した生産体制の確立が重要となる。

研究成果

• [文献書誌] Hikaru Tsutsui: "Agriculture, Water and Environment Problems and Prospects in the Aral Sea Basin" Proc. 3rd Intl. Symp. Aral Sea Basin, JSIDRE, Tokyo. 1-10 (1996)
• [文献書誌] 筒井、荻野ら: "中央アジア。アラール海流域における農業開発と潅漑水利" 農業土木学会誌. 63. 13-18 (1995)
• [文献書誌] 荻野、筒井ら: "中央アジア。イリ川とウルムチ川の水利開発の現状と課題" 農業土木学会誌. 63. 7-11 (1995)
• [文献書誌] H. Tsutsui: "World Irrigation IV: Irrigation and Environment-Aral Sea Basin in Central Asia" Irrig. Engg. and Rural Planning. 25. 42-57 (1993)
• [文献書誌] Tsutsui, H. and Ogino, Y.: "Irrigation Management for Paddy-based Agriculture in the Deltas of the Aral Sea Basin" Irrig. Engg. and Rural Planning. 29. 1-14 (1995)
• [文献書誌] Ogino, Y. and Takaishi, H.: "Water Management on Paddy-based Irrigation in the Deltas of the Aral Sea Basin" Proc. 2nd. Intl. Symp. Aral Sea Basin, JSIDRE, Tokyo. 15-16 (1995)