核移植によるクローン牛作出技術の実用化に関する研究

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05556050
• 研究機関: 東京農業大学
• 研究代表者: 中原 達夫 東京農業大学, 農学部, 教授 (50189015)
• 研究分担者: 高野 博 奈良県畜産試験場, 研究員 ; 青野 文仁 協同飼料株式会社, 研究員 ; 関沢 文夫 栃木県酪農試験場, 研究員 ; 河野 友宏 東京農業大学, 農学部, 助教授 (80153485) ; 角田 幸雄 近畿大学, 農学部, 教授 (80217364)
• キーワード: クローン牛 / 核移植 / 継代核移植 / 単為発生刺激 / 共培養 / 胚移植

研究概要

本研究は、現在基礎研究として実施されている牛の核移植技術を発展させ、実用的なクローン牛作出技術を開発することを目的として実施された。すなわち、1個の胚から85個の胚を複製し、これを牛に移植して最終妊娠率を30%と推定して、26頭のクローン牛を作出することが3年間の目標であった。3年間の研究期間で、いずれの研究分担者も、当初計画した研究目標をほぼ達成し、クローニング規模の拡大および生産率向上のための手法の改善を大幅に進めた。得られた主な成果は、次の通りである。
1)活性化未受精卵への核移植法を開発し、牛胚のクローニング効率を大幅に改善した。
2)継代核移植を3回繰り返して行うことに成功し、平均30個最大43個の胚を作出することができた。これらのクローン胚の移植により産仔の生産に成功した。
3)凍結保存した未受精卵が、レシピエント細胞質として使用できることを明らかにした。また、凍結保存した核移植胚から産子作出に成功した。
4)卵管上皮細胞、バッファローラット肝細胞、マウス胎子繊維芽細胞の供培養細胞としての能力を検定し、マウス胎子繊維芽細胞が最も核移植卵の発生を支持することを明らかにした。
5)反復した電気刺激による核移植卵と未受精卵の活性化法を開発し、従来の方法に比べより高い発生能を持つ核移植卵の作出方法を開発した。
6)細胞周期同調試薬を用いドナー核の細胞周期を調節し、核移植卵の発生能を向上させることをを試み、アフィディコリンの有効性を示した。
7)3年間の研究期間で、核移植卵から40頭の子牛を生産し、当初の目的を達成した。

研究成果

• [文献書誌] 加藤容子: "ウシ核移植卵の体外発生能に及ぼす融合時期ならびに培養液の影響" 日畜会報. 64. 484-490 (1993)
• [文献書誌] 新田良平: "牛体外受精卵の発生率に及ぼす培養液量と培養卵数の影響" 日畜会報. 64. 904-908 (1993)
• [文献書誌] Tsunoda, Y.: "Nuclear transplantation of embryouic stem cells in mice" J. Reprod-Fert.98. 537-540 (1993)
• [文献書誌] Takano, H.: "Effect of aging of recipient oocytes on the development of bovine nuclear transfer embryos in vitro" Theriogenology. 39. 909-917 (1993)
• [文献書誌] 加藤容子: "白血病細胞増殖抑制因子(LIF)がマウス胚の接着ならびに移植後の生存性に及ぼす影響" 哺乳卵学誌. 10. 194-199 (1993)
• [文献書誌] Kono, T.: "Development of androgenetic mouse embryos produced by in vitro fertilization of enucleated oocytes" Mol. Reprod. Dev.34. 43-46 (1993)
• [文献書誌] 外丸祐介: "マウスおよびウシ体外受精胚におけるタンパク質合成の発生に伴う変化" 東京農業大学アイソトープセンター研究報告. 7. 21-26 (1993)
• [文献書誌] Kono, T.: "Thymocyte transfer to enucleated oocytes in the mouse" J. Reprod. Dev.39. 301-307 (1993)
• [文献書誌] Kato, Y.: "Effect of the culture density of nouse zygotes on the development in vitro and in vivo" Theriogenology. 41. 1315-1322 (1994)
• [文献書誌] Kato, Y.: "Effect of the reduction of cytoplasm of mouse 2 cell embryos on blastocele formation timing and developmental ability in vitro and in vivo" Theriogenology. 41. 1483-1488 (1994)
• [文献書誌] Takano, H.: "Production of offspring by nuclear transferred bovine embryos produced in vitro" J. Reprod. Dev.40. 167-170 (1994)
• [文献書誌] 外丸祐介: "ウシ活性化未受精卵への核移植におけるドナー核の形態的変化とヒストンH-1キナーゼ活性" J. Reprod. Dev.40. j25-30 (1994)
• [文献書誌] 関沢文夫: "ウシにおける核移植胚の移植による一卵性双子の作出" J. Reprod. Dev.40. j31-34 (1994)
• [文献書誌] 青野文仁: "牛核移植卵の発生能に及ぼすドナー胚の発育ステージの影響" J. Reprod. Dev.40. j35-40 (1994)
• [文献書誌] Kono, T.: "Effect of ooplast activation on the development of oocytes following nucleus transfer in cattle" Theriogenology. 41. 1463-1471 (1994)
• [文献書誌] Kato, Y.: "Pluripotency of mouse embryonic cells on germ line at 3.5-8.5 and 11.5 days post-coitum after aggregation with precompacted embryos" Develop-Growth & Differ.37. 79-84 (1995)
• [文献書誌] Kato, Y.: "Germ cell nuclei of male fetal mice can support development of chimeras to midgestation following serial transplantation" Development. 121. 779-783 (1995)
• [文献書誌] Tsunoda, Y.: "Development of enucleated mouse oocytes receiving PDGE or FGF treated fetal male germ cells after activation with electrical stimulation" J. Reprod. Dev.41. 71-75 (1995)
• [文献書誌] 大越勝弘: "ウシ核移植卵の体外発生能に及ぼすβ-メルカプトエタノールの影響" 哺乳卵学誌. 12. 127-130 (1995)
• [文献書誌] Kono, T.: "Nuclei from fertilized mouse embryos have calcium-releasing activity" Development. 121. 1123-1128 (1995)
• [文献書誌] 下沢律浩: "培養ウシ卵管上皮細胞における中間系フィラメントの発現と胚発生支持能" J. Mammalian Ova Res. 12. 131-137 (1995)
• [文献書誌] Takano, H.: "Effect of cell cycle stage of douor nuclei on the development of boviue nuclear transferred embryos" J. Reprod. Dev.(In press).