研究概要 |
移植筋芽細胞の宿主内における再生を調べるために、正常筋組織における筋再生過程、および解離した筋芽細胞の培養における性質を調べ、さらに筋芽細胞C2の移植による筋組織の再生を観察した。 1.筋再生過程の観察:ニワトリの前(遅筋)および後広背筋(速筋)に凍結損傷を与えて筋再生を起こさせた。ジストロフィン(Dys)と筋蛋白質トロポニン(Tn)の発現状態を経時的に蛍光抗体法により調べると、Tnは胚型のものが出現したあとにDysが細胞膜上に点状に出現し、またDysが細胞膜上に均一に分布するようになったあとにTnは親型に変換するのを観察した。神経支配の切除はDysの発現には影響を与えなかったが、Tnは成熟したのちに再び胚型にもどるのが観察された。すなわちDysとTnの遺伝子発現は別々に調節されていること、また神経はこれらの蛋白質の発現に異なって作用していることが考えられた。 2.解離筋芽細胞の培養:ニワトリの胚由来の筋細胞を培養し、この細胞内にビオチン標識アクチンおよびミオシンを微量注入して抗ビオチン抗体による染色により、筋原線維の形成過程におけるアクチンとミオシンの動態をとらえた。共焦点顕微鏡的には、ミオシン・アクチン共に筋原線維の横紋のない未熟な部分に取り込まれるのがみえた。電顕的には、ミオシンは主に筋原線維のA-I結合部に、アクチンはA帯のレベルに取り込まれるのがみえた。 3. C2細胞の注入移植による筋線維の形成:蛍光色素PKH26で標識した骨格筋芽細胞C2を、マウス(ScN,mdx)の前脛骨筋に注入移植して免疫抑制剤サイクロスポリンを投与し、経時的に観察した。移植された細胞は宿主の筋芽細胞と融合し、多核のキメラ筋線維を作るのがみえた。本法は筋芽細胞移植による遺伝子治療の基礎的研究をするのに有用な系であることがわかった。
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