研究概要 |
従来、遺伝子の転写調節機構は、その5'端上流にある転写制御領域の下流にβ-GAL,CAT,Luciferase等酵素の遺伝子をレポータとして繋いだDNAを外来性に導入し、発現した酵素活性や抗原性を検出して解析されてきた。しかし、これらの方法では、転写活性を検出した細胞について生理的機能を解析することができない。イオンチャネルは、生細胞で実時間で電気的に定量しうる膜蛋白であり、特に受容体チャネルはアゴニスト依存性に開き、細胞内イオン濃度変化を蛍光指示薬等により非侵襲的に測定できる。当研究ではホヤ胚割球をモデル系として、チャネルの翻訳領域を各種遺伝子の転写制御領域に連結して発現させ、細胞の応答を電気的・光学的手法により検出し、非侵襲的に転写活性を定量するシステムを開発する。平成5年度の成果(1)外来性に発現させるイオンチャネル遺伝子として、先ずホヤ幼生Naチャネル自身を用いるために、その全塩基配列を決定した。このNaチャネルはTTX非感受性であり、ラット脳Naチャネル等と比較してss2部の陰電荷のアミノ酸の点変異によることが示唆された。ホヤ神経割球では内因性Naチャネルと区別するため、アミノ酸配列を変換してTTX感受性にすることを計画している。(2)得られた内因性神経特異的Naチャネル遺伝子をホヤアクチン遺伝子の転写調節領域の下流に連結した。これを本来Na電流のないホヤ予定筋割球へ微小注入し、Na電流が出現するか否かを調べている。筋細胞にNa電流を発現するためのFactorが存在しない可能性も考えられるので、(3)RSVヴィルスのプロモータの下流に連結したものも対照として作製した。(4)受容体チャネルをレポータ遺伝子として適用するため、ホモオリゴマーで機能し、且つCa透過性をもつラットグルタミン酸受容体GluR1遺伝子をアクチン遺伝子の転写調節領域あるいはRSVプロモータに連結したレポータ遺伝子を作製中である。
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