従来、遺伝子の転写調節機構は、その5'端上流にある転写制御領域の下流にβ-GAL、CAT、Luciferase等酵素の遺伝子をレポータとして繁いだDNAを外来性に導入し、発現した酵素活性や抗原性を検出して解析されてきた。しかし、これらの方法では、転写活性を検出した細胞について生理的機能を解析することができない。イオンチャネルは、生細胞で実時間で電気的に定量しうる膜蛋白であり、特に受容体チャネルはアゴニスト依存性に開き、細胞内イオン濃度変化を蛍光指示薬等により非侵襲的に測定できる。当研究ではホヤ胚割球をモデル系として、チャネルの翻訳領域を各種遺伝子の転写制御領域に連結して発現させ、細胞の応答を電気-光学的手法により検出し、非侵襲的に転写活性を定量するシステムを開発する。(1)外来性に発現させる遺伝子として、ホヤ幼性Naチャネル自身を用いるために、その全塩基配列を決定した。このNaチャネルはTTX非感受性であり、それはss2部の陰電荷のアミノ酸の点変異によることが示唆された。(2)RSVヴィルスのプロモータによるイオンチャネル遺伝子の発現が再現性に乏しいので、原因を探るためcDNAよりmRNAを合成して発現させた。(3)従来、ホヤ胚でのmRNA注入による発現は困難とされていたが、thymidine-kinase-mRNAの5'端を連結すると高効率でβ-galactosidaseを発現することがわかった。そこで(4)同じ5'端をホヤNaチャネルに連結した結果、チャネルの発現量が安定し、ホヤ胚細胞においてNaチャネル遺伝子がレポータとして有用であることがわかった。(5)ホヤ神経割球で内因性Naチャネルと区別するため、アミノ酸配列を変換してTTX感受性としたNaチャネルを作成し、これより合成したmRNAを注入した。
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