研究概要 |
視床下部には体温,摂食,飲水,生殖,内分泌,免疫と種々の機能の神経機構が混在し、それらの有機的な統合によってホメオスタシスは維持されている。その統合がどのように実現されているかは重要な課題であるが,方法論的な難しさからほとんど研究はなされていない。視床下部のように複雑な系の解析には個々の細胞の活動と同時に回路網動態の観察が不可欠である。視床下部細胞は小型で記録が難しく,さらにホルモンや温度等への反応は持続時間が長い(数10分-数時間)ために,現在の電気生理学的手法では1つの標本からせいぜい数個のニューロン活動しか記録出来ず,神経回路網を解析するには程遠い状況である。本研究の目的は最近注目を集めている光学的な手法で多数の視床下部細胞の活動を同時に記録する系を確立することである。平成6年度は平成5年度に確立した視床下部の培養系でのニューロン活動の電気生理学的記録を行った。光計測を行うためには活動電位の発生する事が必須である。そこで活動電位を発生する条件を見つけるために。培養細胞から細胞外記録を行った。生後3日の幼弱ラットから得た培養4-10日目の視束前野細胞80個は37℃では自発発射は見られなかった。温度を34-42℃の範囲で変化させたがやはり活動電位の発生は見られなかった。そこで細胞近傍に1mM-0.1Mのグルタメート、あるいは10-100mMのK_+溶液を滴下した。これでも活動電位は発生しなかった。光計測は現在の技術では単一細胞からは活動電位程度の電位変化(約100mV)の検出がS/Nの限界である。残念ながら本研究の手法では視床下部の単一培養ニューロンへの光計測技術の適用は難しい。
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