微小循環領域における酸素分布イメージング双方向顕微鏡システムの開発

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05557007
• 研究機関: 京都府立医科大学
• 研究代表者: 伊藤 俊之 京都府立医科大学, 医学部, 講師 (90168360)
• 研究分担者: 八重樫 和宏 京都府立医科大学, 医学部, 助手 (90254367) ; 森本 武利 京都府立医科大学, 医学部, 教授 (30079694)
• キーワード: 微小循環 / 酸素分圧 / 酸素消費 / ガス輸送 / 拡散現象 / 輸送現象 / 蛍光顕微鏡法 / ビデオ顕微鏡法

研究概要

最近われわれは酸素感受性蛍光薄膜センサーを開発し、ラット腸間膜微小血管網における酸素分布を可視化することに成功した。これはセンサー薄膜と腸間膜血管とを極めて近接させ、微小血管周囲の酸素分布を、蛍光顕微鏡にて観測するものであるが、血流像と酸素分布像とはシャッターを切替えラット腸間膜を挟んで同軸上で向い合わせ、蛍光像と血流像とを双方向から独立に観測するイメージング機器として設計試作するとを目的としている。
本システムでは二台の顕微鏡を横倒しにして互いに向い合わせ、その中間にラット腸管膜用実験チェンバーを置いて、二台を独立に合焦させる機構が本質的である。アルミ厚板を加工して合焦装置を作成し、取り付けた。また、通常の顕微鏡は縦置きでの使用を前提として設計されているため、各部にバネを組み込み、横置きでの使用に耐えるよう改造した。さらに、二台の顕微鏡で観察した画像のずれが生じないよう、一方の画像を裏返しかつ光軸を平行微動させる装置が必要であることも判明したが、これはビデオカメラ取付け部にプリズムを挿入しクロスローラーステージを取り付けることで解決した。本顕微鏡は二方向より二名で使用するため、蛍光照明などは双方より遠隔操作できるよう、電磁シャッター駆動に改造した。
現在、機器の組み立てはほぼ完了し、各部の動作試験も順調である。これとは別に通常の蛍光顕微鏡を用いた動物実験から、連続観察時の蛍光退色の特性曲線もすでに得られており、この影響も加味することで、より正確な酸素分圧評価が可能となってきた。現段階までの結果は国際学会(Osaka Symposium for Microcirculation、First Asian Congress for Microcirculation)にて発表したが、いずれも極めて高い評価を得た。

研究成果

• [文献書誌] T.Itoh et al.: "A closed chamber for intravital microscopy of the rat mesentery under controlled oxygen tension and temperature." Jpn.J.Physiol.43. 847-854 (1993)
• [文献書誌] K.Yaegashi et al.: "A new method to visualize tissue oxygen distribution using fluorescent microscopy." Jpn.J.Physiol.43. S97 (1993)
• [文献書誌] T.Itoh et al.: "Mapping of microscopic distribution of oxygen in the rat mesentery." Jpn.J.Physiol.43. S112 (1993)
• [文献書誌] 伊藤俊之 他: "蛍光法によるマイクロサーキュレーションの計測" 非破壊生体計測研究連絡会ニュースレター. 16. 25-28 (1993)
• [文献書誌] 上坂龍至 他: "生体組織における酸素輸送過程の二次元計測と解析" 生物物理. 33. S121 (1993)
• [文献書誌] 森本武利、伊藤俊之: "体液水分量の測定法とその問題点" 臨床透析. 9. 399-403 (1993)
• [文献書誌] T.Itoh et al.: "A novel method to analyze oxygen transport in the rat mesenteric microcirculation In“Progress of Microcirculation Research in Asia"" Pergamon Press(in press), (1994)
• [文献書誌] K.Yaegashi et al.: "Oxygen transport in rat mesenteric microvessels visualized by an oxygen-sensitive membrane.In“Progress of Microcirculation Research in Asia"" Pergamon Press(in press), (1994)