研究概要 |
本年度は以下の成果を得た。 1.ラット脳cDNAライブラリーより神経特異的なCa^<2+>結合蛋白質neural visinin-like Ca^<2+>-binding protein(NVP-1)をコードするcDNAクローンを単離し、これをプローブとして関連蛋白質のクローニングを行なった。その結果、NVP-2および-3の2種類の蛋白質のcDNAクローンの単離に成功した。いずれの蛋白質も神経特異的に発現しており、脳内における3種類のサブタイプmRNAの分布を明らかにした。いずれのNVPも、neurocalcin,recoverin,visinin,frequerinなどのCa^<2+>結合蛋白質と相同性を有し、これらがgene familyをなすことが明らかにされた。中でもfrequerinはショウジョウバエの神経系においてシナプス伝達の調節に機能することが報告されており、このことからNVPもシナプス伝達に関与することが示唆される。 2.神経伝達物質と同様にエクソサイトーシスによって遊離される化学伝達物質遊離における蛋白質燐酸化及び脱燐酸化反応の作用について検討した。脱燐酸化酵素阻害薬であるオカダ酸及びカリクリンA(CL-A)はラット好塩基球性白血病細胞(RBL-2H3)から外液Ca^<2+>非依存性のセロトニン遊離を惹起した。同時に25,20,18,15,13及び12KDaの蛋白質燐酸化の亢進が起こった。これらの反応は共に燐酸化酵素阻害薬であるスタウロスポリンで阻害された。この結果より非興奮時の細胞では伝達物質遊離反応の細胞内Ca^<2+>濃度依存性過程の下流において、1型蛋白質脱燐酸化酵素が緊張的に抑制をかけていることが示唆され、伝達物質遊離の調節機構を明らかにするうえで重要な知見である。
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