研究概要 |
1.エクソサイトーシスのモデルとして、ラット好塩基球性白血病細胞からのセロトニン遊離に対する蛋白質脱燐酸化酵素阻害薬(オカダ酸及びカリクリンA)の作用を検討した。オカダ酸及びカリクリンAにより遅発性で持続性のセロトニン遊離が惹起され、この遊離作用は蛋白質燐酸化酵素阻害薬であるスタウロスポリンにより抑制された。このことは伝達物質遊離反応は1型あるいは2A型蛋白質脱燐酸化酵素により緊張的に抑制されていること、およびその解除により燐酸化反応が相対的に亢進して遊離反応が惹起されることを示している。以上の結果は伝達物質遊離機構における蛋白質脱燐酸化酵素の役割を示す知見である(Sakamoto et al.,1994)。 2.記憶のモデルである中枢神経海馬CA1領域の長期増強に対するカリクリンAの作用を電気生理学的に検討した。ラット海馬スライスにおいてカリクリンAによりCa^<2+>依存性K^2チャネルがブロックされることにより長期増強が惹起されたことから、長期増強における蛋白質脱燐酸化酵素の関与を示す知見を得た(Murakami et al.,1994) 3.伝達物質遊離反応は細胞内カルシウム濃度の上昇により惹起される。そこで、Neuroblastoma x glioma 雑種細胞であるNG108-15細胞を用いて細胞内カルシウム動態を検討した。細胞内カルシウム貯蔵部位からのカルシウム動員が熱ショック蛋白質(HSP)の発現により調節をうけることを示す知見を得た(Katayama et al.,1994)。
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