研究概要 |
HTLV-I感染を防ぐために、血清中の抗HTLV-I抗体が検出されているが、従来法には種々の難点がある。それらを解消するために、合成ペプチドを抗原とする新しい超高感度検出法(免疫複合体転移検出法)を開発した。2,4-ジニトロフェニル化ウシ血清アルブミン-合成ペプチド結合物、抗HTLV-I IgG、合成ペプチド-β-D-ガラクトシダーゼ結合物の3者からなる免疫複合体を、抗2,4-ジニトロフェニル基IgG不溶化固相から抗ヒトIgG γ鎖IgG不溶化固相へ移し換え、最後の固相に結合したβ-D-ガラクトシダーゼ活性を測定した。用意した9種類の合成ペプチドから3種類の合成ペプチド(Ac-Cys-envgp46(188-224),Ala-Cys-env gp46(237-262),Cys-gag p19(100-130))を選んだ。これらを抗原とすることにより、ELISA、凝集法、ウエスタンブロット法、免疫蛍光法と同等か、それら以上の感度と特異性が得られた。特異性は、これら可溶性の合成ペプチドの過剰量を被検血清に添加して確認するとともに、2つないし3つの合成ペプチドに対する抗HTLV-I IgGを証明することにより向上させることができた。この方法は血清ばかりでなく、尿中、恐らく唾液中の抗HTLV-I IgGの検出にも有効であることが分った。また、従来は、免疫反応を小試験管内で行ない、固相としての小ビーズをピンセットで試験管から試験管へ移し換え、シグナルとしての蛍光強度を蛍光光度計で1つ1つ測定していたので、carryoverによる偽陽性を回避できず、多くの検体のテストも困難であった。そこで、マイクロプレートと蛍光プレートリーダーの利用を試みた。その結果、ピンセットを使う必要がなくなり、carryoverによる偽陽性を皆無とすることができた。また、蛍光プレートリーダーを使うことにより、感度を低下させることなく96検体を1分40秒で測定することができるようになった。このように、多数検体のテストを容易に実用化できる見通しを得たが、現在、固相の形を一層実用的に改良しつつある。
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