平成7年度の実施計画に応じて以下の2点に大別して記述する。 (1)動脈内膜を模倣した3次元立体培養装置の改良 新しいタイプの装置として、上室面並びに下室面の両面に細胞が培養できる装置を作成した。基本的には上下を対称にした装置で、これを使用して羊膜上面に上皮細胞(気管上皮を使用。)、下面に内皮細胞、あるいは上面に上皮細胞、下面に線維芽細胞などの間葉細胞など異種の細胞の同時立体培養が可能となった。そして、例えば上皮細胞と内皮細胞を同時培養すると上皮細胞の浮腫が発生しやすくなることより、内皮細胞による内張りの形成による透過性の亢進あるいは浮腫促進物質の分泌の可能性など新しい重要課題が提起されてきた。 (2)装置の動脈硬化研究への応用 脂肪斑類似病変の形成に対するサイトカインの影響について研究を行ったが、研究の内容を高いレベルにするために、細胞の分離を高純度にする必要が生じた。そのために従来の比重分画法に加えて免疫磁気ビーズ細胞分離法による細胞採取法の検討を行い、マクロファージとリンパ球あるいはリンパ球のサブセット別採取が可能となり、精度の高い実験の遂行が可能となった。 羊膜面に培養した内皮細胞の性状、特に接着装置の形成について検討した。本培養装置に培養された内皮細胞は、通常の培養皿に培養された内皮細胞と大きく異なり接着装置、とりわけtight junctionの形成を示すことがZO-1抗体を用いた免疫染色並びに電顕的検討で明らかとなった。すなわち、この培養装置により内皮細胞は生体内の構造・配列により近い発達分化を示し、この装置がin vitroにおける動脈硬化研究に適したモデルであることが確認された。
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