研究概要 |
(1)動脈内膜を模倣した3次元立体培養装置の開発 培養装置において"動脈内膜"として使用した羊膜の採取法、調整法、並びに保存法を検討した。更に、培養装置の基本設計に工夫を重ね、精巧で使いやすい基本設計を確立し、用途に応じていくつかの応用型を作成した。 (2)この装置で培養された内皮細胞の特性 通常の培養皿に培養された内皮細胞とは異なり、tight junctionの形成、Z0-1の発現、さらにはエンドセリンの分泌などに極性があり、生体内における内皮細胞により近似した分化を遂げていることが明らかとなった。 (3)装置の動脈硬化研究への応用 この装置が動脈硬化の初期現象である内皮細胞と単球・マクファージ、Tリンパ球との相互作用の解析に有用であることを示した。次いでこの装置を用いてヒトの動脈硬化の初期病変である脂肪斑の形成が可能であること、その際、内皮細胞によるLDLの修飾(過酸化)が重要に関与していることが明らかとなった。このin vitroにおける脂肪斑形成に及ぼすサイトカイン、特にIL-1,TNF,IFN-γの影響をについて検討を加えた。これらのメカニズムをより詳細に明らかにする目的で、免疫磁気細胞分離法により高純度とした単球、Tリンパ球およびそのサブセットを使用した検索を進めている。 (4)装置の血管モデル以外への応用-器官モデルの作成 新しいタイプの装置として、上質面、下質面の両面に細胞培養が可能な装置を開発し、上面に上皮細胞(気道上皮を使用)、下面に内皮細胞、あるいは上面に上皮細胞、下面に線維芽細胞といった間葉細胞など異種の細胞の同時立体培養が可能となり、新しい器官モデルとしての応用への道が開いた。 以上の成果より、専門業者と打ち合わせをすることにより、手軽に、しかも用途に応じて色々と改良ができる動脈内膜を模倣した3次元立体培養装置の作成が可能となった。この装置は、動脈硬化を始めとする血管病のみならず、炎症のメカニズムや癌転移などの分子生物学的研究に幅広く応用できる。
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